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日本は2021年末時点で、国債や借入金などを合計した「国の借金」が約1218兆円に達し、収入よりも支出が多い状況が続いています。 「国の借金」を増やし続けることは将来世代への負担になるという考え方と、将来のためにも今は積極的にお金を使い経済を立て直すべき（＝財政出動）という考え方があります。

財務省は財政健全化のために支出を押さえるべきと主張する一方、自国通貨建て国債のデフォルト（債務不履行）が起こることは考えられないとも説明しています。

急激な円安の進行やエネルギー価格の上昇などによって物価が高騰しています。消費税については、税率の引き下げにより国民の消費を喚起できるという考えと、消費税は安定した財源なので、社会保障の維持のために安易に引き下げないほうが良いという考えがあります。

また消費税は高所得者ほど納める金額が大きくなるという考え方がある一方、相対的には低所得者ほど負担が大きくなる（生活に必要なものを買うだけでも税負担がある）ので、景気に関係なく減税すべきという考えもあります。

自民党は憲法改正に向けて4つの改憲項目を掲げており、その内の一つが「九条への自衛隊明記」です。 自衛隊の存在は広く国民に認められていますが、憲法にはその存在が明記されていません。そのため自民党は、現行の憲法9条1、2項の文言を書き換えずに、3項を新設し自衛隊の存在を明記するという改憲案を掲げています。 一方で、武力を行使できる自衛隊を憲法に明文化することで、前項に掲げる「武力の放棄」が有名無実化し、ひいては日本に関係ない戦争に巻き込まれることになるのではないかと心配する声もあります。

【日本国憲法】より条文の抜粋 第九条　日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 ２　前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

緊急事態とは、大地震などの災害や戦争、または新型コロナウイルスなどのような未知の伝染病の蔓延等で社会機能を維持できなくなるような場合を指します。 日本国憲法には緊急事態の想定がないため、このままの状態は日本社会の緊急時の脆弱性を指摘する声があります。しかし一方で、憲法に緊急事態条項を明記することは、政府の権限を強め、人権の制限に繋がる恐れがあることや、東日本大震災や新型コロナウィルスの蔓延時も個別の法律で対応することが可能だったため、憲法改正までは必要ないとの指摘もあります。

「政府の権限を一時的に強化」することについては、国会の審議・議決なく法律と同等の効力を持つ政令を発令したり、財政支出を可能にするといった案や、国民の移動の自由などを一時的に制限する案などが議論されています。

世界の軍事技術の高度化に伴い、日本をめぐる安全保障環境は一層激しさを増しています。万一日本が他国から攻撃を受けた場合、迎撃だけでは国土や国民を守れないという指摘もあり、発射される直前に相手国のミサイル発射台を攻撃したり、あるいは指揮・統制施設、通信施設を無力化する兵器等の保有を政府は検討しています。 しかし、いかなる場合にも日本から相手国を攻撃することは「専守防衛」の基本原則に反する可能性があり、議論が分かれています。

近年北朝鮮は、類を見ない頻度で弾道ミサイルの発射を行なっており、既に日本を核攻撃する能力を保有していると見られています。また中国もミサイル配備の充実を図るなど周辺国の軍事的脅威は増してきています。 一方、仮にそれらを攻撃する能力を備えたとしても、そもそも移動式のミサイル発射台やミサイル自体を正確に攻撃するのは困難との見方もあり、現実的な安全保障に寄与するかは不透明です。 また敵基地拠点への攻撃は先制攻撃とみなされる恐れもありますが、政府は相手国に攻撃の用意があれば自衛の範囲との見解を示し、自民党は「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えた経緯もあります。

ウクライナ情勢を受けて、日本でも防衛費の増額が論点になっています。軍備増強の進む中国などを念頭に、日本でも対GDP2％をめどに増額すべきだという議論があり、その場合防衛費は2022年現在の5.3兆円からおよそ10〜11兆円規模になります。また、防衛費の増額（＝軍備増強）は、対立する国同士がお互いに軍拡競争を行うことで、かえって戦争を誘発する要因にもなることも懸念されます。

アメリカは2020年に、日本を含む同盟国に防衛費をGDP比2%まで引き上げることを求めており、2%という数字はこれが基準となっています。ドイツの防衛費は2021年時に1.49%でしたが、ウクライナ情勢を受けて大幅にそれまでの方針を転換し2%超を目指すことを表明し、ヨーロッパ内では同様の動きが広がっています。 なお日本の防衛費のGDP比は2022年度予算で1.09%と説明されていますが、NATOなどの「国防予算」に含まれる沿岸警備（海上保安庁）やPKO活動などの費用はここに含まれないため、実際の日本のGDP比はそれより大きいとの指摘もあります。

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、民主主義的な価値観を重んずる欧米の先進国（アメリカ・イギリスなど）と、強いリーダーシップによって国力を強めようとする新興国（ロシア・中国など）との対立が鋭くなってきています。 日本は従来どおり日米同盟やヨーロッパとの関係を維持・強化すべきか、あるいは食料やエネルギーなどで経済的な依存関係にあるロシアや中国ともバランスをとって付き合うべきか、議論が分かれています。 大国の争いに巻き込まれるのを避け、アジア・アフリカなどの発展途上国に対する開発援助に力を入れつつ、国連改革を進めるという方向性もあります。

戦争を食い止める目的で設けられた国際連合の安全保障理事会も、拒否権を持つ大国の対立からその機能を果たせていません。大国の利害によって影響を受ける現状の世界秩序を保つ上で、日本が他の国々と協力して国連安保理改革の当事者となることを期待する声もあります。

ロシアの侵攻から逃れるため、日本に住む親族などを頼って来日したウクライナ人は「避難民」とされ、観光客と同じような短期滞在の在留資格と、その後1年間日本国内で働くことが許可される『特定活動』という枠組みで保護されています。一方で日本政府はそれらのウクライナ人に対しても、『定住』の在留資格が与えられる「難民」としての認定はしていません。日本の難民認定率は1%未満と他の先進国と比べて非常に低いことを国連機関などから指摘されていますが、日本政府は「偽装難民」を防ぐ名目で、外国人の受け入れを強く制限する傾向があるとの指摘がなされており、また治安上の懸念などから受け入れを支持しない意見も根強くあります。

2011年の福島第一原発事故以降、日本国内だけでなく世界的にも脱原発の動きが加速しましたが、ロシアのウクライナ侵攻により、他国にエネルギー資源を依存することのリスクが顕在化しました。 CO2を排出するが今なお主力で安定した電力を供給できる火力発電、クリーンだが安定性・発電量・コストなどに課題の残る再生可能エネルギーなどと合わせて、今一度事故によるリスクの大きい原子力発電所を当面の間でも利用していくかが、焦点となっています。

日本には現在、運用可能な原子力発電所が33基あり、2022年6月現在はそのうち10基が稼働しています。福島の事故以降、「新規制基準」と呼ばれる厳しい審査を経なければ原子力発電所は再稼働も、新規の稼働もできないとされています。一方、基準が厳しすぎるという意見や、どのような基準があっても想定外の事故は免れないとする意見もあります。

農業者戸別所得補償は、米・麦・大豆などの主要農産物を生産する農家の不安定な収入を直接保障する制度です。 企業・法人の農業への参入は農業の大規模化による生産性の向上、新規就農は担い手を増やすために有効です。 また、肥料・飼料・原油等の農業に必要な資材は、価格高騰が続いています。

農業者戸別所得補償は、民主党政権下で実施されていましたが、バラマキとの批判もあり自民党政権下で廃止されました。 企業・法人の参入は将来的な生産力の向上に寄与するかもしれませんが、撤退する企業も多く、また既存の農家への支援ではありません。 資材の価格への補助も、あくまで間接的な支援にとどまるという批判もあります。

環境税は環境保全を目的として環境負荷の高いエネルギー消費に課される税金です。日本では化石燃料に課される「地球温暖化対策のための税」がそれに当たり、国民は電気代などから間接的に負担しています。ただし日本の環境税率は、ヨーロッパ諸国と比較するとまだ低く、更なる負担が必要という声もあります。 2015年の「パリ協定」に基づき地球温暖化を1.5℃以内に収めるため国際社会として協調して行く必要がある一方で、昨今のガソリン代や電気代の高騰の中で国民や企業に更なる負担を強いてまで環境保全を進めるべきか、専門家や政治家の間でも意見が別れています。

５大環境問題として、地球温暖化 · 海洋汚染 · 水質汚染 · 大気汚染 · 森林破壊があります。環境保全をめぐる法整備は、環境税の導入だけでなく、大気汚染防止法やプラスチック資源循環促進法など様々な形で行われています。環境破壊の影響が私たちの生活にどう影響するのはすぐには分かりにくいですが、一度もたらされた変化は一国に留まらず、長期に渡って世界中の気候や生態系といった環境に悪影響を及ぼす危険性もあります。

現在、文部科学省は「選択と集中」の方針を進めており、先進的かつ短期的に大きな成果の出やすいと思われる分野（医学系や工学系など）に資源を集中させることで、実用的な成果を生むこと（＝「お金儲け」につながりやすい研究成果）を方針としています。 一方で、自然科学のうち選ばれなかった分野や成果の出にくい基礎研究分野、そして人文・社会科学全般が弱体化する恐れがあり、長期的には学術全体の水準が落ちてしまう懸念も指摘されています。

公立学校の教員不足や過重労働の実態が問題視されるようになり、過労を原因とした心身不調による休職者・離職者も相次いでいます。このままでは安定した質の高い公教育の確保が難しくなる可能性があります。非正規教員の待遇改善や正規化、教職員の「働き方改革」を求める声が上がっています。また、部活動を学校から地域にゆだねる施策などがすでに始まっています。 一方、子供の教育の多様化、不登校やいじめに悩む子供のための選択肢として、フリースクールの拡充や夜間中学、通信制教育など、既存の公教育以外の場での教育の機会を保障・支援していくという考え方、公設学校に民間運営を取り入れることで、業務の効率化や教育方法の新たな開発を求める意見もあります。

現在の学校現場や教職員をめぐる具体的な課題として、授業準備時間の不足、新規応募者の減少による担い手不足、不安定で給与の低い非正規教員の増加などが挙げられます。 教育の多様性を高めることは子供一人ひとりの個性に合わせた学習ができるメリットがある一方、学習内容の偏りや、親の収入による機会の格差を生む可能性もあります。

JRなど民間企業が経営する公共交通機関を、国・地方自治体の支出によってこれ以上地域格差を広げないよう維持することで、住民の交通権（移動の自由）を保障すべきという考え方があります。 一方、利用者の極端に少ない（減少した）路線の維持は経営的な限界があり現実性を欠くことから、既存の鉄道・バス路線の維持にこだわらず、コンパクトシティ化や集住化とともに交通手段の再編成による効率化、合理化を進めるべきという考え方もあります。

地方人口の急激な減少や、コロナ禍による需要の減少で、著しく運賃収入が減った地方のローカル線の維持を巡って、JRが地方自治体に協議を求める動きが広がっています。地方自治体は現状維持を望むものの、JRは赤字路線の維持管理コストの負担を地方自治体にも求めています。さらに近年相次ぐ大規模な災害からの復旧のため、国や地方自治体の負担も増えています。鉄道を廃止しバス路線に転換する例もありますが、バス路線の維持も困難になる例が増えており、地方における移動手段の確保が問題になっています。

選択的夫婦別姓とは、『夫婦が望む場合には，結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める』制度であり、従来通り夫婦が同じ姓を名乗ることもできることから「選択的」と名前が付いています。 姓を変えることによる手続きや仕事上の不利益、アイデンティティの喪失などを理由に夫婦別姓を求める声がある一方、夫婦が別の姓を名乗ることにより家族の絆や一体感を失う、子供がどちらの姓を名乗ればよいかわからないなどの考えから反対の立場を取る人もいます。

1898年に民法が施行された際に世帯主である戸主の姓に合わせることが決められましたが、それ以前は妻は実家の姓を名乗ることを定められ夫婦は別姓でした。なお戦後の民法改革により1947年からは、戸主ではなく“夫と妻どちらかの氏に合わせる”と変わりました。

2001年4月にオランダで同性婚が認められたのを皮切りに、2022年7月現在は31の国で同性婚が認められています。 一方日本では、伝統的家族が壊れるとの懸念から同性婚に反対する声が根強くあります。